新しい大学入試では、知識や技能に加えて、「思考力・判断力・表現力」が求められるようになります。つまり、「知識があること」だけでなく、「知識をどう使うか」も問われるようになるのです。
2020年度(2021年1月)から、現在の大学入試センター試験に代わって「大学入学共通テスト(以下、共通テスト)」が実施されます。そのプレテスト(本番の実施に向けて行う、検証用の試験)で出題されたのが、下の問題。百聞は一見にしかずということで、少し見てみましょう。
国語(現代文)の問題例はこちら
※大学入試センター「平成29年度試行調査」より
部新入試ポイント解説活動の規定について話す生徒たちの会話が題材で、解答は記述式。前後の文脈と3つの資料から、会話文中の空欄に当てはまる文章を記述するよう求められた問題です。教科書の内容を覚えていれば解答できるという問題ではないことがわかります。
ポイントは、複数の資料を読み解き(思考力)、必要な情報はどれか考えたり、組み合わせたりすること(判断力)、そして自分の言葉で解答を表現すること(表現力)。「思考力・判断力・表現力」が求められる問題の典型的な例といえるでしょう。
難しそうに感じるかもしれませんが、共通テストでは数学でもこうした記述問題が出題される予定です。そのほかの科目のマーク式問題でも、資料を読み解く力や、身についている知識を組み合わせて考える力を問うような問題が出題されると言われています。
すでに一部の大学の一般入試では、共通テストのような記述問題が出題され始めています。これからの入試ではこうした問題が一般的になると思っていた方がいいでしょう。
英語の入試はこれまで「読む」「聞く」が中心でしたが、これからは「書く」「話す」力も重視されます。この4つの力を一般的に「英語4技能」と呼ぶので、覚えておきましょう。
しかし何十万人もいる受験生に、入試当日にスピーキングテストを課すのは現実的ではないということで、民間の英語資格・検定試験(以下、英語検定)の成績が活用されることになりました。
現役生は高3の4月~12月の間に2回まで英語検定を受検でき、その結果が大学入試センターを通じて各大学へ送られます。各大学はその英語検定の成績か、共通テストの成績、もしくは両方の成績を合否の判定材料にします。
活用できる英語検定は4技能を測れることが条件。どの検定を選択しても、受験生は何かしらの形でライティング・スピーキングテストを受けることになります。
なお、こうした外部検定試験を活用した入試は、現在でも多くの大学が採用していて、特に推薦・AO入試で活用されています。なかには指定の英語検定で一定以上の成績を収めることを受験資格にしている入試もあります。今後は共通テストと同様に、4技能を測る英語検定がさらに活用されるでしょう。
「入試=学科試験」だった時代はもう終わり。これからは「多面的・総合的評価」といって、学びに向かう姿勢や意欲、学問への適性など、学力以外の資質も求められるようになります。
すでに現在の推薦・AO入試でも面接や志望理由書の提出などによって多面的・総合的評価を行っていますが、同じ評価方式が新入試の一般入試でも導入されるかもしれません。どのような形で評価されるのか、今後の発表に注目したいところです。
なお、推薦・AO入試の合格者は、私立大全体の合格者数の50%を超えていて、国公立大も増え始めているところ。これからも推薦・AO入試枠はますます増えることが予想されます。ちなみに新入試では、推薦入試は「学校推薦型選抜」に、AO入試は「総合型選抜」に、それぞれ名前が変わることも覚えておきましょう。
最後に、入試のスケジュールの変更点もチェックしておきましょう。
学校推薦型選抜(現推薦入試)は、出願が11月以降、合格発表が12月以降に。総合型選抜(現AO入試)は、出願が9月以降、合格発表が11月以降に変更されます。現AO入試では8月中に選抜を行ってすぐに合格発表を行う大学も一部ありましたが、今後はそのような早期の合格発表もなくなるでしょう。
刻々と明らかになる新入試制度。情報を集めたり、早めに志望校を考えたり、自分から積極的に行動していくことが今後ますます大切になっていくでしょう。